その全貌が明らかになった坂本龍一8年ぶりのオリジナルアルバム『async』。
みなさんはどのようにお聴きになりましたか?

ここではワタリウム美術館で開催中の『Ryuichi Sakamoto | async』展に来場された方々がアルバムについての思いを綴った「解読」と坂本龍一本人の言葉を残していく「返信」を更新していきます。

また、引き続き『async』発売前に公開していました 坂本龍一の足跡を辿る「予習」、多くの皆さんとニューアルバムを予測した「予想」もお楽しみください。

予想 伊藤亜紗

ずばり、テーマは「幸福」ではないでしょうか。研究者という職業柄、フィールドワークやインタビューを行うことが多いのですが、その音源を文字起こししているとき、とてつもない幸福感につつまれることがあります。その場にいたときはスルーしてしまっていたインタビュイーの微細な心の動きがそこにはあり、意外さにいちいち不意を打たれながら、頭の中では新しい研究のアイディアが間欠泉のごとくスパークします。つまり「幸福」とは、思いがけない刺激によって、自分の魂が息を吹きかえすことではないでしょうか。そんな音楽を聴くことができるのではないかと、楽しみにしています。




伊藤亜紗
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。専門は美学、現代アート、身体論。もともとは生物学者を目指していたが、大学三年次に文転。著書に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)、『目の見えないアスリートの身体論』(潮出版)など。同時並行して、美術作品の制作にもたずさわる。参加作品に小林耕平《タ・イ・ム・マ・シ・ン》(国立近代美術館)など。