Ryuichi Sakamoto : CODA を観て、思うこと。

坂本龍一の2012年から5年間を追ったドキュメンタリー映画『Ryuichi Sakamoto: CODA 』。
公開後、多くの反響をいただいております。思いのこもった声の数々をこちらでご紹介いたします。

[ 感想 ]株式会社幻冬舎 代表取締役社長 見城徹氏が語る「CODA」

坂本龍一を追いかけたドキュメンタリー映画[CODA]を恵比寿ガーデンシネマで今、観終わった。5年半の歳月を費やしたらしいが、坂本龍一の世界が静かに圧倒的に迫って来る。YMOのロスアンゼルス公演が挿入されたり、[戦場のメリークリスマス][シェルタリング・スカイ][ラストエンペラー][レヴェナント:蘇えりし者]などの映画のシーンや本人のプライベート映像なども効果的に使われていて、それがこの映画の厚みを増している。当然、本人の口からガン闘病のことも語られる。坂本龍一をドキュメンタリー映画に撮ると坂本龍一の音楽の世界になる、というのは実は難しいことだが、これが流れるように自然に出来ている。冒頭の東北大震災の津波に呑まれてボロボロになったピアノに寄り添って、坂本龍一が「これが自然が調律した本来のピアノの音だ」というシーンがあるが、それがこの映画の静かなキー・トーンになっている。日本の生んだ稀有な音楽家・坂本龍一は何処から来て、何処へ行くのか?プライベートを描いて世界の行く末を考えさせられる美しい映画だった。ドキュメンタリーはこんなにも素晴らしい仕事が出来るのだと、感動した。

坂本龍一は共同体のルールなんか関係ない。個体の掟で生きている。この映画はそういうことだ。反原発の政治的参加もアンガージュマンであって、坂本龍一の個体の掟なのだ。彼は音を通して世界と向き合っている。カッコいいとしかいいようがない。

ヴェンダースの[ピナ]というドキュメンタリー映画がある。[CODA]はヴェンダースを軽々と超えた。